八神くんのお気に入り
遠くの方で、佐々木くんがどこかの教室に入るのが見えた。
やった!
これでもう距離が離れることがない。
やっとハンカチを渡せるっ!
佐々木くんが入った教室は、名前の札も無い空き部屋。
たぶん、今は準備室になってると思う。
その部屋のドアをガラッと音を立てて開けた。
その瞬間、視界に入ったものに……私は動けなくなった。
やっぱりと言って良かった。
その部屋は空き部屋になってて、隅の方には去年の文化祭で使ったであろう物が置いてあった。
そして、使ってない机と椅子が並べてある。
佐々木くんは机の前に立ってて……手には、マジックペンが。
佐々木くんと視線が絡む。
え……
佐々木……くん?
心臓がバクバクと嫌な音を立て、変な汗が出てくる。