八神くんのお気に入り
「殴ったら、佐々木くんの思う壺なの……」
「どう言うこと?」
「犯人……佐々木くんだったの」
「もう遅いでしょ。痛〜」
佐々木くんは口の中を切ったのか、血を拭い八神くんを見た。
「殴れよ。ボコボコにしろよ。ムカつくんだろ?」
ギロッと八神くんが佐々木くんを睨む。
「ほら早く。小早川さんにキスマーク付けたんだよ?」
佐々木くんは自分の首を指す。
ココにした。って教えるように。
お願い、八神くん……殴らないで。
願うようにギュッと瞳を閉じると、手に温もりを感じた。
八神くんを見ると真っ直ぐ佐々木くんを見ていて……
「くだらねぇ」
私の手を引き、一緒に立ち上がった。
「おまえは殴る価値が無い。先生に言うなり、嫌がらせするなり、好きにしろよ」
そう言って八神くんは私の腕を引き、歩き出した。