八神くんのお気に入り
「あ、八神じゃん」
「なんだ来てたのか」
入ってすぐの席に座ってた、黒髪にピアスを付けている彼。
あ……この人、八神くんの彼女のフリをした時に会った人だ。
バチッと目があって、私は会釈をした。
「葵ちゃんも来てんだ?」
「へ?」
あ、私……“葵”と思われてるんだ。
チラッと八神くんを見る。
話、合わせてた方が良いのかな……?
「お久しぶりです」
不自然なところがないようにニッコリ笑って見せた。
「こいつ葵じゃねぇから」
グイッと私を自分のもとへ寄せた八神くん。
ドキッ
「は?」
驚いてる彼を置いて、八神くんは私に視線を移した。
「莉子何食べる?」
「あ、えっと……晩ご飯食べられなくなっちゃうから、ポテトとジュースだけで……」