八神くんのお気に入り
「すっげぇ悲しそうな顔してんぞ。返してやれよ」
その言葉に八神くんはジュースを私の前に起き、返してくれた。
良かった。と、安心したのも束の間、ジュースを持ち上げると
「無いっ!!」
空っぽになっていた。
そのやり取りに、また黒髪の彼は笑い出した。
「莉子ちゃん最高!」
せっかく返してくれたと思ったのに……!
「もう八神くんなんか嫌いっ」
プイッと反対側を向き、ポテトを食べ始めた。
「あーあ。莉子ちゃん怒っちゃったよ」
それでも八神くんは何も言ってこなくて、私も意地になって八神くんに背を向ける。
ふーんっだ!
「そう言えば、葵ちゃんって存在すんの?」
……え。
「何?急に。存在するよ」
「だって名前しか聞いたことねぇし。八神が作り出した架空の人物かと」