八神くんのお気に入り

「そろそろ出ようぜ?」

そう言って八神くんは立ち上がるのを見て、私も立ち上がろうとしたけど、すぐに座り直した。



そうだ。私怒ってたんだ。


「何してんだよ?行くぞ」

「オレンジジュース」


子供みたいに拗ねれば、黒髪の彼が笑い出した。


「めっちゃ拗ねてんじゃん」

「置いてくぞ?」


むー。

今日の八神くん、いじわるだ。



でも、このまま座ってたら本当に置いて帰られそうで私は無言のまま立ち上がり、八神くんと一緒にお店を後にした。




不貞腐れてる私は、もちろん八神くんと話す訳でもなく。


無言のまま歩き続ける。



そう言えば昨日も無言だったな……昨日はいろいろあったからだけど……。



「まだ怒ってる?」


珍しく八神くんから声をかけてきたけど、怒ってる私はプイッと反対側を向いた。


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