八神くんのお気に入り
「莉子……」
八神くんが切なそうな顔をしてるのが見え、余計胸が苦しくなる。
キーン コーン カーン コーン
HRが始まるチャイムが鳴った。
どうしたらいいのかわからなくて……2人を見てるとその場から逃げ出したくて……。
今は、このチャイムに助けられた。
クルッと振り返り、教室に向かって歩き出す私に、菫は肩を抱き寄せた。
「大丈夫だよ」
菫が優しい声でそう言うから涙が出てくる。
……私もそう思いたい。
心からそう願った。
────…
授業なんて集中できるわけもなく、あっという間にお昼になった。
「菫……私、今日はお昼いらない」
「莉子……わかった」
菫は教室から出て行き、私は自分の席に座った。
何も考えたくないのに……悪い方向にしか考えられなくて自分が嫌になる。