八神くんのお気に入り

……いよいよだ。


前の席にいる菫の背中を見つめた。




頑張らなくちゃ……。

八神くんが葵さんをまだ好きだったとしても、あの時、過去を話してくれて私のことを好きって言ってくれた。


“言わなくても伝わったかな”じゃなくて……ちゃんと気持ち、伝えなきゃ……。


逃げてて、ずるい人間だった。




私は、両手を力強く握った。



よし。行ってこようっ!



大きく深呼吸をして私は5組に向かった。


大丈夫。

八神くんに好きって伝えるだけ。

大丈夫。


そう何度も心の中で繰り返し、落ち着かせていた。




5組に着くと、もう終わってたみたいで教室には数人しか残っていなかった。


教室を覗く私に、背後から原田くんに声をかけられた。


「八神なら昼からずっと戻ってないぞ」

「え……帰ったのかな?」


< 476 / 511 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop