八神くんのお気に入り
「楓!」
その声に八神くんは振り返り、私も顔を上げると、葵さんが歩いてきていた。
「話って……?」
チラッと私を見た葵さん。
「場所を変えない?」
葵さんは八神くんの腕を引いて歩き出した。
腕を組んで歩く2人の後ろ姿を見ることしか出来なくて……涙が止まらなかった。
私が入る場所なんか無い。
「行かないで……私のそばにいて……」
消え入るような声で……願うように……言葉を漏らした。
「ごめん。莉子」
そう聞こえたかと思うと、私は八神くんに抱きしめられた。
え……?
「ちょっと楓?話があるんじゃ……!」
「俺達の関係はもう終わったんだ。それを言おうとした」
「ちょ、何言ってるの?納得できない!!彼女って紹介してくれるって言ったじゃない!」
動揺している葵さんを他所に、八神くんは抱きしめる力を強めた。