八神くんのお気に入り
「気持ち悪いんだよ裏切り者。そんなにヤりたきゃそこら辺のホテルうろついてろよ。誰か声かけてくれるだろ」
「……最低……」
そう呟いた瞬間、葵さんは私に飛びかかってきた。
「きゃっ!」
でも八神くんがすぐに振り払い、少しバランスを崩しただけで済んだ。
地面に倒れた葵さんがキッと私を睨む。
「覚えてなさいよ……学校に行けなくしてやるんだから……!」
その瞬間八神くんは地面に倒れた葵さんの胸ぐらを掴み、持ち上げた。
「うっ……」
「そんな事したらどうなるかわかってんだろ?」
八神くんの低い声が、その場の空気を一気に凍らせる。
「女でも容赦しねぇ」
パッと手を離すと、葵さんは咳込んで再び地面に倒れた。
今度こそ葵さんに背を向け、八神くんは歩き出した。
私の腕を引いて。