八神くんのお気に入り
「ま、いいや。考えといて。俺も探しとくから」
「うん」
少し先に莉子の家が見えた。
「あ。お父さん!」
そう叫んだ莉子は大きく手を振って、少し前を歩いていた男の人は手を振り返していた。
ぅわっ。
まじかよ……。
心の準備が出来てないのに、いきなり。
とりあえず、ペコリと頭を下げた。
スーツ姿の男性は、短髪で、どっちかっていうとポッチャリめ。
優しそうな目元が莉子にそっくり。
「君は?」
「あ、えっとね……私の彼氏の八神くん!」
少し恥ずかしそうにそう言った莉子に、いままで紹介された事が無かったからか、何か俺まで照れてきた。
「……君は、莉子とは違うようだね?」
……何だ?
空気が一瞬で変わり、俺が少し構えると
「何だ。その目は」
無意識に睨んでいたのだろう。
そう言われた。