八神くんのお気に入り

枕が涙で濡れる。


「私には心配してくれるお父さんとお母さんがいる。……八神くんにはそれがいないんだよ?一緒にいる間もずっとその事隠してたんだよ??」


それを思い出すだけで辛くて……。

枕をギュッと掴んだ。



「噂が流れたときも止めてくれたから、学校に行けるようになった……。たしかに八神くんと一緒にいるようになって嫌な事もあったけど……それ以上に八神くんは私を助けてくれた」



すぐに駆けつけてくれて……

『莉子』って言って抱きしめてくれた。


それだけですごく安心できた。



「莉子は彼が大好きなのね。彼、毎日お父さんにお願いしに来てたの」


その言葉に私は顔を上げた。



え……八神くんが……?



「頭を下げて『お願いします』って。『こんな格好だからすぐに目をつけられるけど、全力で守ります』って言ってたのよ」



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