八神くんのお気に入り
HRが終わって、先生が教室の扉を閉めて出て行く。
『うわっ、お前ら』
先生の声に閉まった扉を見る。
『こんな所で油売ってないで授業の準備しろ』
きっとHRが早く終わったクラスが、ここまで来たんだろう。
やだ〜
私は両手で顔を覆った。
噂って怖いよ〜
「泣いてるの?」
突然の菫の声に覆ってた手を慌てて退ける。
「いや、違うよ…!」
「きついね」
菫…
「ん…」
わかってくれるんだ…
「八神はさぁ、この噂、耳に入ってんのかね?」
「…どうかな…」
入ってても、入っていなくても八神くんにはあんまり関係ない噂だもんね…
「なんか言われたら私に言いなよ?言い返してやるから」
ほんと菫は頼もしい。
手先も器用でいろんな人と仲が良くて頼りになる。
私にとって勿体無いくらいの完璧な人間だ。
「ありがと菫」