八神くんのお気に入り
やだやだ。
キーホルダーを握りしめ、誰もいない廊下を走る。
銀髪ヤンキー以外の男子が追いかけてくる。
「待て!」
怖い。
グッと後ろに引かれる私の体。
金髪ヤンキーが私のカバンの紐を掴んでいるのだ。
「捕まえた」
その手はカバンの紐から私の腕へと移動していた。
ひっ!
恐怖で声も出ない。
「八神が呼んでんの」
もう1人の男子がそう言って、もう片方の腕を掴んだ。
終わった。
完全に捕まった。
4人もいるなんて……
逃げ道なんてあるわけない。
両腕を掴まれたまま、私はさっきの教室に戻された。
「逃げんなよ」
そう言って金髪ヤンキーは私の背中を押した。
「きゃっ」
銀髪ヤンキーの前に出る私。
身を乗り出して、ジーッと穴が空くんじゃないかと思うくらい私を見る彼。
怖くて目が合わせられない。