八神くんのお気に入り

「でもほんと莉子ありがとう」


満面の笑みで言う菫に私は首を振った。


「んーん、大丈夫?」

「大丈夫大丈夫!口の中切っただけだから」


照れ臭そうに菫は笑った。



「ところで、その八神は?」


菫の質問に、みんなが黙りこくる。




え…?


気のせい…?



一瞬だけ、空気が重くなったような…




そんなクラス空気を変えたのは委員長だった。


「あれだけ騒ぎを起こしたんだもん。停学中よ」


そう言った委員長は、“あの先輩もね”って付け加えた。




「そっか…」


隣で頷く菫に、私は安堵する。



あの先輩達には会いたくなかったから良かった…。




「ごめんね、小早川さん」


突然謝ってきたクラスメイトの人達。


「ん?何が??」

「噂話…小早川さんそんな人じゃないのに…」


ドクッ


「半分信じちゃって…嫌な思いしたよね?」


…え?



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