八神くんのお気に入り
「他のクラスが聞きに来ても“違う”って言えなかった…ごめん」
その言葉に次から次へと謝るクラスメイト。
そんなに謝られると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
私は思いっきり首を横に振った。
「そんな…事……」
語尾が小さくなっていく私を見兼ねたのか、菫は口を開いた。
「全くもってそうだよ!休み時間の度にいろんな人が来て、莉子がどんな気持ちでいたかわかる!?」
菫の言葉にクラスメイトは黙った。
「菫…」
私は菫の裾を掴んだ。
モゴモゴと口ごもるみんなを見ると、悪気があった訳じゃないってわかる。
だからっ…
もう良いよ。
って、言おうとしたけど
菫が私の手を握ったから言えなかった。
「莉子は良い子だから、“そんな事ない。大丈夫”って言う。だから次、噂話をするんだったら私を助けてくれた莉子の話をして。かっこいい莉子の話」
そう言って菫は私を見た。