八神くんのお気に入り
「八神ー」
そう後ろから聞こえた声に身体がビクッとした。
顔を上げると、前に八神くんがいたんだ。
バチッと目が合う。
私は慌てて視線を下に向けた。
近づいていく距離に
心臓がドキドキ、ドキドキして飛び出そう。
…っ。
スッと八神くんとすれ違う。
「……」
「……」
「…っぷ、はぁ!」
「え、何?莉子、息止めてたの!?」
「ん…」
だって何か…ちょっと…
私の隣を歩いていた菫が私の前に立った。
「ねぇ何かあったでしょ?」
「え…」
「教えなさい」
グイグと迫ってくる菫に、何歩か後ずさる。
「え、ちょっ…」
それでもまだ迫ってくる菫に、私は言わざるを得なかった。
「莉子そんな事言ったの!?」
菫の大きい声に廊下にいた人が私達を見た。
「あんた凄すぎ」
はぁーっと深いため息をついた菫。