八神くんのお気に入り
「後で教えてよ?」
ニッコリ笑った菫は、トンッと優しく私の背中を押す。
菫…
私は菫からカバンを受け取り、2棟に向かって走り出した。
「菫、ありがとう!」
階段を下りて、2棟に続く渡り廊下を渡る。
あの銀色の後ろ姿は、
「八神くん!」
私は八神くんの腕を掴んだ。
「小早川さん」
ビックリした様子の八神くんは、目を見開いていた。
「あ…血が…!」
私の言葉に八神くんは、確認するかのように手の平を返しては戻してを繰り返していた。
「ここ…」
そう言って、八神くんの頬に優しく触れた。
指にサラッと八神くんの銀色の髪の毛が当たる。
確認するのを止めた八神くんは、私の腕を掴んだ。
「汚れる」
そう言って、自分の頬から私の手を離したんだ。