八神くんのお気に入り
八神くんに腕を掴まれたまま、私は自分の手を見た。
あ…血がついてる…
だから汚れるって…
「朝ちょっとやり合ったから、そんときに出来た傷だろ」
ペロッと八神くんが血の付いた私の指を、拭き取るように舐めた。
「ひゃあ?!」
「こんくらい舐めときゃ治る。汚して悪かったな」
舐めるって…
ほっぺただよ?
どうやって舐めるの…?
今度は両手で八神くんの頬を持つように触れた。
「だめ…!バイキンが入ります!保健室、行きましょう?」
私の言葉に何か言いたそうな顔をした八神くんだけど、諦めてくれたのか小さいため息を漏らした。
「わかった」
その返事を聞いてHR中の教室の廊下を静かに通り、2人で保健室に向かった。