八神くんのお気に入り
ガラッと保健室のドアを開けると、そこには保健室の先生の姿がなくて…。
「あれ、先生どこ行ったのかな…?」
「帰ろう小早川さん」
「だ、ダメです!」
そう言って、近くにあった椅子に八神くんを無理矢理座らせた。
わ、私が手当てしよう…。
机の上にあったガーゼを水で濡らし、八神くんの頬の血を優しく拭き取る。
勝手に薬を使うのが怖くて、私が持っていた絆創膏を貼った。
簡単な手当てなのに、八神くんはおとなしく座っててくれて…
「サンキュー」
なんて言ってくれたんだ。
「……」
八神くんの顔を見ると、いろんな思いがこみ上げてきて…私は俯いてしまった。