3LDK、バス・トイレ・〇〇付き
第10話

怨み

━━金色の光が消えた。

《シュー、シュー》
独特の音と共に現れたのは、まなみ“らしき”人物だった…。

“らしき”とは、まなみなのだが、どこか違うのだ。

髪の色が黒髪から茶髪になっていて、まなみの周りを金色の光が包み込んでいた。

(す、スーパーまなみ…?)
なつきは、こんな状況にも関わらず、思わずあるアニメの主人公が頭に浮かんでいた。

「松平様から離れろ!」
と、まなみは言った。

「え?」
なつきは驚いた。

出逢った頃はともかく、今現在、《松平》と苗字で呼ばれていなかったからだ。

━━どうやら、まなみの身体を借りて悌二郎が喋っているらしい…。

「ほぉ、貴様は会津の田舎侍か…。」
その男はまなみに向かって、
「会津の田舎侍には、この結界は突破出来ぬようだな。」
と言った。

《キッ!》
まなみの目つきが変わった。

「貴様、長州藩(ちょうしゅうはん)か!」
まなみが声を上げた。

「だとしたら、どうする?」
男はまなみを見て、
「田舎侍に何が出来よう…。」
と笑った。

「わぁーーーーーーー!!」
っと、まなみは自分を鼓舞するように声を上げた。

《ドーン!》
と、けたたましい音と共に、まなみの髪が金色に輝き始めた。

《ビビビビ、ビビビビ》
まなみから発せられた音も変わった。

《バチッ!》
結界が遮って来たが、まなみはそれをもろともせずに、突破してなつきの部屋に入って来た。

男は、なつきの上から降りると、まなみに殴り掛かった!

まなみは、それを素手で掴んだ。

「遅すぎて、驚いたわ…。」
まなみはその手を捻り上げて、
「長州藩の力はこんな程度か…。」
と、冷たい笑みを浮かべた。

「!?」
なつきは一瞬、凍りついた!

今の冷たい笑みを浮かべたまなみは、明らかにまなみではなかったからだ…。

「うっ」
男はひるんだ。

「その男の身体から離れろ!」
まなみは、言った。

そして、まなみの身体から悌二郎達が抜け出した。

他の幽霊達と融合した悌二郎は、金色の光を帯びていた。

まなみは、その場に倒れ込んだ。

「松平様、佐川様をお願い致します。」
と、悌二郎は言った。

「は、はい。」
なつきは、まなみを抱えるようにして部屋を出た。

「良かろう、相手になってやる。」
男がそう言うと、黒い魂みたいな物が男の身体から抜け出した。

そして、それは人の形になって、最終的には侍の姿になった。

黒い光を帯びた、長州藩士の幽霊らしい。


「150年の怨み、今、ここで晴らそうぞ!」
悌二郎は、刀を抜いた。

「黙れ、田舎侍。」
長州藩士の幽霊も刀を抜く。

《ガキーン!》
物凄い音がして、悌二郎と長州藩士が激しくぶつかり合う。

悌二郎の方が優勢だ。

そして長州藩士がよろけた。

悌二郎は、
「覚悟!」
と、刀を振り下ろした。

「うっ!」
長州藩士はその場に倒れ込んだ。

そして、長州藩士の幽霊は消滅した。

悌二郎もその場に倒れ込んだ。

━━悌二郎の身体から、他の幽霊達が抜け出て来た。


「な、何だこれは!?」
なつきは目を丸くした。

悌二郎達と生活を始めて、多少の事では驚かなくなっていたが、さすがに次元が違いすぎる。

瞬間移動したり、金色に光ったり、まるで、不思議な球を七つ集めるアニメのような展開である。

そして、まなみが目を覚ました。

「ま、まなみ!」
なつきは、声を掛けた。

「……?」
まなみは訳が分からない様子。

「大丈夫?」
なつきが声を掛けた。

「うん、私は平気だけど…。」
まなみはなつきを見て、
「なつきは無事?」
と訊いた。

「うん、まなみが助けてくれたから…。」
と、なつきは答えた。

「え?」
まなみは目を丸くして、
「私が?」
と訊いた。

「うん。」
なつきは頷いて、
「悌二郎君達と一緒にね。」
と答えた。

そして、二人は悌二郎達を見た。

━━全員、横たわっている。

悌二郎達は、男の攻撃を殆ど受けていないが、まなみの身体を借りて結界を突破したりしたので、かなり体力というか霊力を消耗しているようだ。


なつきは、警察に通報した。

━━しばらくすると、パトカーが到着して男は連行されて行った…。
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