3LDK、バス・トイレ・〇〇付き
第4話
正体
━━不思議だった…。
急に幽霊が現れたのに、二人はそれほど怖くはなかった…。
勿論、見た瞬間は絶句したが、それ以上の恐怖感はなかった。
「ど、どうしよう…。」
まなみは、なつきを見た。
「私、空手やってたけど…。」
なつきは少し間を置いて、
「幽霊は相手にした事ないな…。」
と苦笑した。
そして、その幽霊達は、皆、若い感じがした。
15歳前後くらいの少年の幽霊達だった。
「あの…。」
幽霊のうちの一人が、二人に近付いて来た。
「?」
「?」
なつきとまなみは、顔を見合わせた。
━━まさか、幽霊から話し掛けられるとは、思ってもいなかったからだ。
「は、はい…。」
なつきは返事をした。
「私の名前は、伊東悌次郎(いとう・ていじろう)と申します。」
と、その幽霊は言った。
幽霊から礼儀正しく挨拶をされたので、二人は拍子抜けしていた。
「私の名前は、松平…なつき…です。」
と、なつきは答えた。
「!?」
その、伊藤と名乗った幽霊だけでなく、
他の幽霊達も、驚いたような顔をした。
「ま、松平様!」
と、幽霊達は、一斉に膝まづいた。
「え?」
なつきは目を丸くした。
「我々の主君の名前が、松平様なのです。」
と、悌次郎は答えた。
「しゅ、主君?」
と、まなみが訊いた。
「はい、我々は…。」
悌次郎は少し間を置いて、
「会津藩白虎士中二番隊(あいづはんびゃっこしちゅうにばんたい)である。」
と答えた。
「ま、まさか…。」
なつきは驚きを隠せず、
「びゃ、白虎隊!?」
と目を丸くした。
「え、あの?」
と、まなみも驚いている。
━━会津藩白虎士中二番隊…。
会津戦争に際して会津藩が組織した、16歳前後の武家の男子によって構成された部隊で、飯盛山(いいもりやま)で、自刃(じじん)した事でも有名である。
ちなみに自刃とは、自ら命を絶つ事である。
「あなた達は、我々を知っておられるのか?」
別の幽霊が二人を見て、
「私は石山虎之助(いしやま・とらのすけ)と申します。」
と言った。
「え、えぇ、有名な方達なので…。」
と、まなみは答えた。
「失礼ですが、あなたのお名前は?」
と、虎之助が訊いた。
「私は…佐川…まなみ…です。」
と、まなみは答えた。
「さ、佐川様!」
再び、幽霊達が膝まづいた。
「こ、今度は何?」
と、まなみが訊いた。
「会津藩の家老(かろう)の名前が、佐川様なのです。」
と、虎之助が答えた。
「!?」
「!?」
なつきとまなみは、顔を見合わせた。
どうやら二人の苗字は、彼ら白虎隊にとって関係が深いようである。
「あ?」
まなみは何かに気付いたように、
「確か…。」
と言った。
「どうしたの?」
なつきは、まなみを見た。
「このアパート名…。」
と、まなみが言った。
「アパート名?」
と、なつきが訊いた。
「《Tigre blanco》…。」
まなみはなつきを見て、
「スペイン語で《ホワイトタイガー》だ。」
と言った。
「ホワイトタイガー…。」
なつきは少し間を置いて、
「白虎…。」
と呟くように言った。
━━どうやら、この部屋には、白虎隊の幽霊が棲みついているようだ…。
急に幽霊が現れたのに、二人はそれほど怖くはなかった…。
勿論、見た瞬間は絶句したが、それ以上の恐怖感はなかった。
「ど、どうしよう…。」
まなみは、なつきを見た。
「私、空手やってたけど…。」
なつきは少し間を置いて、
「幽霊は相手にした事ないな…。」
と苦笑した。
そして、その幽霊達は、皆、若い感じがした。
15歳前後くらいの少年の幽霊達だった。
「あの…。」
幽霊のうちの一人が、二人に近付いて来た。
「?」
「?」
なつきとまなみは、顔を見合わせた。
━━まさか、幽霊から話し掛けられるとは、思ってもいなかったからだ。
「は、はい…。」
なつきは返事をした。
「私の名前は、伊東悌次郎(いとう・ていじろう)と申します。」
と、その幽霊は言った。
幽霊から礼儀正しく挨拶をされたので、二人は拍子抜けしていた。
「私の名前は、松平…なつき…です。」
と、なつきは答えた。
「!?」
その、伊藤と名乗った幽霊だけでなく、
他の幽霊達も、驚いたような顔をした。
「ま、松平様!」
と、幽霊達は、一斉に膝まづいた。
「え?」
なつきは目を丸くした。
「我々の主君の名前が、松平様なのです。」
と、悌次郎は答えた。
「しゅ、主君?」
と、まなみが訊いた。
「はい、我々は…。」
悌次郎は少し間を置いて、
「会津藩白虎士中二番隊(あいづはんびゃっこしちゅうにばんたい)である。」
と答えた。
「ま、まさか…。」
なつきは驚きを隠せず、
「びゃ、白虎隊!?」
と目を丸くした。
「え、あの?」
と、まなみも驚いている。
━━会津藩白虎士中二番隊…。
会津戦争に際して会津藩が組織した、16歳前後の武家の男子によって構成された部隊で、飯盛山(いいもりやま)で、自刃(じじん)した事でも有名である。
ちなみに自刃とは、自ら命を絶つ事である。
「あなた達は、我々を知っておられるのか?」
別の幽霊が二人を見て、
「私は石山虎之助(いしやま・とらのすけ)と申します。」
と言った。
「え、えぇ、有名な方達なので…。」
と、まなみは答えた。
「失礼ですが、あなたのお名前は?」
と、虎之助が訊いた。
「私は…佐川…まなみ…です。」
と、まなみは答えた。
「さ、佐川様!」
再び、幽霊達が膝まづいた。
「こ、今度は何?」
と、まなみが訊いた。
「会津藩の家老(かろう)の名前が、佐川様なのです。」
と、虎之助が答えた。
「!?」
「!?」
なつきとまなみは、顔を見合わせた。
どうやら二人の苗字は、彼ら白虎隊にとって関係が深いようである。
「あ?」
まなみは何かに気付いたように、
「確か…。」
と言った。
「どうしたの?」
なつきは、まなみを見た。
「このアパート名…。」
と、まなみが言った。
「アパート名?」
と、なつきが訊いた。
「《Tigre blanco》…。」
まなみはなつきを見て、
「スペイン語で《ホワイトタイガー》だ。」
と言った。
「ホワイトタイガー…。」
なつきは少し間を置いて、
「白虎…。」
と呟くように言った。
━━どうやら、この部屋には、白虎隊の幽霊が棲みついているようだ…。