追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました２

　当然ながら、ルークの目線に声はない。なのに俺の脳内には「迂闊に獣姿をさらしてんじゃねえ！」というルークの怒声がたしかに響いた。
　俺は無言のまま、ツツツッと目線を逸らしてみせるのが精一杯だった。
「……俺は今日の午後、こいつを連れてアイリーンのカフェにいく。店外のテラス席にいるから、お前を嘘つきと呼んだ仲間たちを連れてきて見せてやるといい。それでお前の嘘つきの汚名も晴れるだろう」
　ルークは少年に目線を戻すと、予想だにしないこんな提案をしてみせた。
　俺はギョッとしてルークを仰ぎ見た。
「ありがとうお兄さん！　皆に、その毛むくじゃらを見せてやるよ！　これで、嘘じゃなかったって証明できるよ」
　ルークの提案に、少年はパァッと表情を綻ばせた。
「よし。ただしこれからは、そんなものを使って他人の家屋敷を覗くなんざ、絶対にしちゃ駄目だ。いいな？」
「うん、もうしない。約束する！　だからお兄さんも、絶対にカフェに来てよね!?」
「ああ、必ず行く。約束しよう」
「それじゃ僕、皆に伝えにいくね。お邪魔しました。白いのも、また後でな！」
　ルークから約束を取り付けた少年は、嬉々として駆けて行った。