追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 俺は不満気に、ぺちんとひとつ尾っぽを絨毯に打ち付けると、緩慢に奴へと視線を巡らせた。
『……おい、性悪オオカミ。ずいぶんと高みからの物言いだな。だがな、あの時俺が駆け付けていなかったら、ノアールは危なかったぞ』
 俺に言わせれば、ノアールはまだ子供で、その判断力も未熟だ。明確な殺意を向けられている状況を知りながら、静観など出来なかった。こいつには、伝えるべき……いや、伝えておかなければならない。
「詳しく教えてください。いったい、あの場でなにが起こっていたのですか」
 奴は不遜な笑みを引っ込めると、一転、スッと引き締まった表情で俺を見上げた。
『アイリーンが運んでいた朝食の皿に、プリエーラがなにかを混入した。おそらく、昨晩プリエーラを訪ねて来たバーモン侯爵家の使者からの指示だろう。弟は、間違いなくバーモン侯爵家に命を狙われている』
 奴は僅かに目を見開いただけで、取り乱したりはしなかった。
『驚かないんだな。想像の範囲内か?』
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