追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 実は、このピクニックの発案者はアイリーンだ。
 王家の霊廟というのは、王宮内ではなく、少し離れたアムルの丘の上にある。そうしてこのアムルの丘というのは、景色景観のよい拓けた草原になっている。前王妃の七回目の月命日の日、アイリーンは傷心するノアールに、「王妃様が作っていたスイーツを再現して霊廟があるアムルの丘へ持っていき、太陽の下で広げて、皆で生前の王妃様の思い出話に花を咲かせませんか」と提案した。ノアールはアイリーンのこの提案を、亡き母も喜ぶ素敵な思いつきだと言って喜び、とても楽しみにしていたのだ。
『なんだ? お前は一緒に行かないのか?』
「私も同行したいところですが、生憎と明日はどうしても政務を外せません。……なんとか早めに切り上げられるように調整してみますが、出発時刻には確実に間に合いません」
『なに、大丈夫だ。そんなに無理をしなくとも、ノアールのことは俺がしっかり守ってやる』
「それは安心ですね。どうか明日は、よろしくお願いします。私も必ず、後から向かいます」
 口では「安心」と言いながら、奴の表情は険しかった――。


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