追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 だって、人の足があらぬ方向に曲がっているなど、普通に考えてあり得ないもの。
 納得した私は、今度は対岸の方向へと、ゆっくりと首を巡らせた。そうして、そこで初めて対岸の地面にプリエーラや令嬢たちが座り込んでいるのに気づく。そのすぐ脇には、ノアール様と聖獣の姿を取ったクロフがいた。
 その姿を目にすれば、誰に聞かされずとも、クロフが駆けつけてプリエーラたちを救出した状況を理解した。
 ……そう言えば、プリンスとはまた違う嘶きが聞こえていたような気がするわ。あれは、クロフだったのね。
 全員の無事を認識すれば、目頭がじんわりと熱を持った。
 吊り橋の分断に巻き込まれながら、誰ひとり欠くことなく、こうして命を繋いだこと。そのことに、言葉では言い表せない喜びと安堵が滲む。
 奇跡のようだと思った。だけどすぐに、この奇跡は、降って沸いた偶然ではあり得ないと思い直した。
 だってこの偶然は、プリンスによってなされた必然ともいえる結果なのだから――!
 真綿に包み込むような優しさで私を抱き締める純白の温もりが、この上なく尊く、そして愛おしく感じられた。
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