追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「……プリンス、ありがとうっ! ありがとう!!」
 気づいた時には、感謝の叫びが喉から迸っていた。
 目の前の光景が、あふれる涙で滲み始めたと思ったら、ふわふわの懐にそっと押し当てられた。すっぽりと私を包み込むやわらかな感触と温もりに、深い安堵が広がる。
 ところが、ホッとして気が緩んでしまったのか、意図せず私の全身がガタガタと震え出した。プリンスは私を抱き締める前足にギュッと力を篭めた。そのまま、両の前足で、私の肩や背中を何度もさすってくれた。
 体の震えが段々と治まってくると、今度は私の目もとや頬に、ペロリと舌が伸びてくる。涙の痕を辿り、眦に新たに滲む涙まで、プリンスは余さず全て舌で丁寧に掬い取った。
 くすぐったい刺激に、私がクスリと笑えば、プリンスはますます勢いよくペロペロと舌を這わせた。
 優しい刺激は、否応なしに私の心も刺激する。やがて私の心の中で、膨らみきったプリンスへの愛おしさが弾けた。
「……大好きよ、プリンス」
 私はプリンスの懐から伸び上がり、モフモフと生え揃った体毛よりも長いお鬚がツンツンと生える頬のあたりを、両手で挟み込む。
< 179 / 216 >

この作品をシェア

pagetop