追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「そんなことはありませんよ。あなたに言われて、私は目が覚める思いがしました」
 奴は一歩進み出すと、俺の隣に並ぶ。
「私はどうやら、間違っていたようです。彼女の心が欲しいなら、欲しいと叫び、それを得るために励めばいい。そうして王位に関しても、私は考え違いをしていたのかもしれません。そもそも私は、父によって既に王位継承者に指名されています。冷静に考えれば、父がそれを覆してまでノアールを指名し直すというのは、少々飛躍し過ぎにも思えてきます。一度じっくりと、父やノアールと腹を割って話し合うつもりです」
 口にした内容もさることながら、間近に見る奴の表情が、先ほどとは打って変わって、憑き物が取れたように晴れやかになっていた。
「……どういう風の吹き回しだ」
「強いて言えば、心地いい夜風でしょうか? 涼やかな夜風が、私の頭を冷やしてくれたようです」
「ははっ! それは、なによりだ」
 奴のうまい切り返しに、思わず白い歯がこぼれた。
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