追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 国賓の見送りならいざ知らず、菓子職人の見送りには明らかに過ぎた歓待だったが、三人は私の見送りを譲ろうとしなかった。
「そうか。此度は本当に言葉では言い尽くせぬほど世話になった。どうかこれに懲りず、また必ず我が国にいらしてくだされ」
 ちなみに、この短い期間の中で、総力をあげた捜査によってアンリエッタ様を中毒死に至らしめた魚が突きとめられた。プリエーラの自室からも、毒成分が僅かに残る容器が押収されていた。
 バーモン侯爵以下、プリエーラや護衛官、その他事件に関わった者たちには、今後厳しい沙汰がくだることになるだろう。
「こちらこそとても有意義に過ごさせていただきました。ありがとうございました」
 国王様からスッと右手を差し出され、恐れ多くも近くまで寄り、その手を取った。すると国王様が、握った私の手をグイッと引き寄せた。
 驚いて見上げた私の目に、悪戯っぽい目をした国王様のドアップが迫る。
「本当のところ、どの王子が有力なのじゃ? わしとしては、クロフかノアールを選んでもらい、アイリーン殿を義娘に迎えたいというのが本音だがな」
 っ! 国王様に耳元で囁かれ、ビクンと肩が跳ねた。
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