追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 小粋なご主人の厚意で、私の前にドンッと置かれたかつ丼には、カキフライがふたつのっかっていた。
「いただきます!」
 さぁ食べようかというタイミングで、頭上にヌッと影がかかった。
 ん?
「失礼。相席をお願いしてもよろしいでしょうか?」
 見上げると、旅装を身に纏った長身の男性が、私の向かいの席を指差していた。
「もちろんです! どうぞ」
「ありがとうございます」
 男性は優雅な所作で、私の向かいに腰掛けた。
 マントのフードが影を落とし、顔の造作はよく見えなかったけれど、男性からは隠しきれない気品のようなものが漂っていた。
「ご主人、私にもかつ丼を頼む」
「あいよっ!」
 男性は私の前に置かれたかつ丼をチラリと一瞥すると、メニューを見ずにオーダーを流す。そうしてスルリと、マントのフードを落とした。
 ……え?
 かつ丼を食べようとしていた手が、……止まる。目も、フードの下から現れた、この世のものとは思えない美貌に釘付けになった。
 年の頃は二十歳くらい。艶やかな黒髪と紫の瞳を持つ男性は、呼吸の仕方すら忘れるくらい美しかった。
「へい、お待ち!」
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