追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 ん? 店内から聞こえてきたアイリーンのクシャミに、まさか風邪気味なのだろうかと心配になった。風邪はひき始めの対処が物を言う……。ならば、俺が彼女をとびきりふわふわの毛皮で包み、温めてやってもいい。そうして懐に閉じ込めたアイリーンの紅潮した頬をペロリと舐め、汗ばんだ首から鎖骨もペロペロと……っと、いかん!
 脳裏を過ぎった破廉恥な想像を、慌てて振り払う。
 とにかくだ、俺は嫉妬を燃やすあまり、疑心暗鬼になりすぎていたのだ。もしかすると、今頃奴はひとり、国に帰っているかもしれんな。
 考え事がちょうどひと段落ついたタイミングで、大きな皿を手に、アイリーンがやって来た。
「プリンス、お待たせ! プリンス特製ランチプレートをめしあがれ!」
 アイリーンは弾んだ声で、手にした大皿を俺の前にジャーンっと差し出す。
 なっ!? なんだこれは――!!
 俺は目の前に置かれた、肉球マークの旗が立ったチキンライスに飛びついた。そうして目を真ん丸にして、ウッキウキで頬張った。
 ……うんま――っい!! ひと口頬張れば、尾っぽが千切れそうな勢いで振れた。
「ふふふ。プリンスってば、頬っぺにおべんとさんがついてるわよ?」
 ん? 夢中で頬張る俺の口もとを、アイリーンが指先で優しく拭う。
 俺はその指を、ペロンと舐める。アイリーンの肌はチキンライスより、もっともっと美味い……。
「やんっ。くすぐったい……ふふっ」
 っ! 頬っぺたのおべんとさんとやら、お前は実にいい仕事をしているぞ――っ!
 アイリーンの可愛さと、特製プレートの美味しさに、俺の尾っぽは際限なく揺れ続けた。

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