追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 ……ん? 振り返ると、我が家の生け垣に、あろうことか竹筒が突き刺さっているのに気づく。
 ……なんだ? 更に、よくよく目を凝らして見れば、なんとそこには――!
「やっぱり、いた」
 俺がソレを視認するのと同時に、子供特有の甲高い声があがる。
 竹筒の奥にはなんと、ジーッとジーッと俺を覗き見るクリクリとした目があった。
 ……なんということだ! 高さおよそ二メートルの生垣は、俺が後ろ足で立ちさえしなければ、獣姿を外からすっぽりと隠してくれる。それに慢心した俺は、自宅のロッジで過ごす時は、周囲への警戒を怠ってしまっていた。
 とはいえまさか、平和なこの村にあって、他家の生垣に竹筒を突き入れて、その穴から覗きを試みる輩がいようなど、想像もしていなかったのだ。
 俺が猛烈な自己嫌悪に陥っているうちに、覗き見ていた少年の気配は遠ざかった。
「外にいたのか。てっきり鏡の前に張り付いてるかと思ったが、いないから心配したぜ。朝飯にしようぜ」
 ロッジの玄関から聞こえるルークの声に、ハッとして視線を向ける。
「ん、どうした? この世の終わりみてえなしけた面をして?」
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