追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「聖獣は風邪には縁がないぜ?」
「あら、だったら安心だわね。それじゃプリンス、いってきます!」
 彼女は俺からパッと手を離すと、まばゆい笑みを残してヒラリと馬車に乗り込んだ。
 こうしてアイリーンは、ルークと黒オオカミとともに、マイベリー村を旅立っていった。

 アイリーンが村を出て、四日目の朝が来た。
 俺は朝飯を食いに、重い尾っぽを引きずって、老婆の家に向かった。
「白ちゃんや、遠慮せずこっちもお食べよ」
「クゥン……」
 差し出された煮っころがしを見て、俺はしょんぼりと俯いた。
 決して、老婆の飯がまずいんじゃない。
 ……たとえ、老婆のおかずにバリエーションがなく、似たり寄ったりのおかかずが、この丸三日間で三順していようとも。
 ……たとえ、老婆のおかずが毎食、煮物、佃煮、煮びたしと、茶色いおかずのオンパレードだろうとも。
 ……そう。俺はちょっと、アイリーンの作るカフェメニューが恋しくなってしまっただけなんだ。
 アイリーンが満面の笑みで差し出す、『いつもの』スイーツ全部のせプレートが食べたい。それから、肉球マークの旗が立った、俺だけの特製ランチプレートが食べたい――。
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