かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 音符がよめない、といった決定的弱点を持っている彼。
 譜面を書きこんでいる純なんて、初めて見たに等しい。
「いや、今までは書いてない。書けないに等しい。だけど、新境地に挑んでみてる」
 特に昨日の瞬と私の言動に気にしている風でもない。
 香花ちゃんから、ことの成り行きを聞いているのかいないのか。 
 その、いつものポーカーフェイスからは、見て取れなかったけれど。
「純」
「……、……、んあ? 何か言った?」
「ううん、いや、うん、あのさ……」
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