かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 それは、ラブシーンを見たというのもあったし、他の理由もあった。
 何故なら、その女子の方は、他の誰でもない。
 なっちゃんだったからだ。
 ――不倫!?
 ちょま、いくら年上だからといって、禿げあがった親父相手だとは、私は全然想像していなかった。
 はあ~、と私はため息をついて、くるりと踵を返し、その場を去った。
 私もひとのこと言えないけどさ~、高野先生とキスしたし。
 なっちゃんに部内に好きなひとができたって聞いた。部内――するとあの親父は、剣道部顧問の先生か。
 剣道部顧問って誰だっけ?
 私は高野先生の顔は好みの方だし、まだギリギリの20代だ。
 でも、あの親父はないだろ、なっちゃん。
 顔は見えなかったけど、40代以上だろ。
 ――ひとの好みって、解らんな。
 私はあたまをぽりぽりと掻き、この件は一旦持ち帰ることにした。
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