かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 微かな後悔を覚えていた。
 曲が終わり、純のMCが私に追い打ちをかける。
「次は最後です。やっぱオリジナルで締めたいと思ってたんですが――すみません。歌詞がなくて、インストです――」
 純がぺこりとあたまを下げると、会場内からは“いいよー!”“聞かせてー!”という声が飛ぶ。
 3人の名前のコールも聞こえる。“TRUTH!!” という声も。
 すすり泣きの声も。
 結局、歌詞が間に合わなかったのか――。
 ああ、何で私、意地張ってたんだろう。
 私の書いたものをラストに歌ってほしかった。
 もう、この3人で結集することは二度とないのに。
 私は目を閉じ、俯いて、最期の楽曲に耳を澄ませるようにした――。

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