かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 一緒にいてもいなくても、好きだ。
 さっき、祐太の前では泣かないと決めたのに、純のことを想うだけで目の奥がつんとする。
 私は泣くまいと、鼻根を右手でぎゅうとつねった。
 そこでピンコン、とメールの音がした。
 慌ててスマホを確認する。
『いつでも暇』
 たったそれだけの文だったけど、私は安堵した。
 いつでも会ってくれる――そう解釈したのだった。
『今、駅に向かってるんだけど』
 私が二度送信した文に、今度はすぐに既読がついた。
『じゃあ、今、行く』
 見上げた空は、紫から朱色のグラデーションを連ねていた。
 陽が落ちるのが早い。
 この空の模様は、二度と同じ光景は見られない。
 私はその空を、強く胸に抱きしめた。
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