かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 はるか昔の話だと解り、純は肩を下げる。どこかほっとしたのか。
「そのひとのね、好きだった花を、今私が好きなひとにあげたいと思った」
 そう言って、私はトートバックからかすみ草を出す。
 ひとつの枝に、ふたつの白い花がついている。
「はい」
 私はそれを彼に差し出すと、彼は一瞬戸惑い、そして片手で受け取った。  
 そして何のてらいもなく、シャツの胸ポケットに刺した。
 ゆらゆら揺れるふたつの花弁。
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