かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 ――何て思ってる場合じゃなかった。
 純は深刻そうに見える。
 いつもの淡々とした彼だけど、やっぱり何か違う。
「どうしたの? バンドのこと?」
 私は思ったことをストレートに投げた。
「直球だな」
 純が顔を上げる。
「よく解ったな」 
 そしてほんの数ミリ、口角を上げた。
「だって、あんたのあたまのなか、それしかないじゃない」
 純は黙ってコーヒーを啜り、
「柚実には隠しても解るか」
と、コーヒーの氷をからからとかき混ぜた。
「なに、バンドできなくなっちゃったから?」
 うん、と彼は素直に頷いた。
「いないの? 部内でバンド組めそうなひと」
「いない」
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