かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 “コーラス自身アリのギタリスト”“フォークデュオ相手探してます”“ハタチ以上で日曜日空いてる方”etc……。
 どれも手書きのものでそれをコピーして貼り付けてあるのだろう。どのチラシからも覇気を感じられた。
 やっぱり手書きって大事だ。
 ワープロで打ったものなら、気迫が感じられないだろう。
 純は顎に手をあてて、品定めをしている。
 条件に合う、いいものがあればいいのだけれど……私は彼の横顔を見ながら密かに祈った。
 結局純は、2,3枚のビラを取り、胸ポッケに入れた。
 そう、私があげたかすみ草がまだ刺さったままのポッケに。
 さっきまでは私と純の幸せのかたちだと思っていたけれど。
 二輪の花は、圭吾先輩と瞬なのかもしれない。
 17歳になったばかりの純。
 純があたらしいステージで輝けるように、がんばれがんばれと揺れていた。
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