かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 そして、純は――?
 純は? どうするの?
 私は咄嗟に、教室の対角上にいる彼の後ろ姿を見ながら思った。
 瞬を追って、東京の大学に行くのだろうか。
 私は、文学部に入りたいと前々からちらっと思っていた。
 それは、純たちが私に詞の書く才能があると言ってくれたからだった。
 文系は得意だったし、一番楽しいと思える授業は現文、古文だったからだ。
 物理はからっきしだし、数学もテストの点数は悪くないけど、あまり楽しいと思えない。
 うちはひとり親家庭だから、私立や東京の大学は無理だろう。
 地元の国立大か、教育大か、そういったところだ。
 でもそうしたら、純との距離が離れてしまう。
 奨学金という手もあるか……そうしたら東京の大学でもどこでも。
 私は、純といたい。
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