かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 もっともっと彼の傍で、歌声を聴いていたい。
 純がいなくても平気、何て云えない。
 私は彼の傍にいたい。その進路を希望する。
「提出は1週間後だからなー。よく考えるんだぞー」
 高野先生はニヤニヤしながら声を飛ばす。
「何でニヤついてるの~!?」
 私は一番後ろの席から声を返した。
「ん。生徒の困った顔を見るのが好きなんだ、俺は」
 そう言ってメガネの弦をくいっと上げる先生。
「悪趣味!」
「莫迦!」
 咄嗟にみんなが消しゴムを千切って、先生に投げつけた。
 私はコンパスを投げてやろうとさえ思った。
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