かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 純の着ている白いYシャツが眩しく見えるのは、彼に恋をしている証拠か。
「ん、駄目だった」
「駄目? 全部?」
 そこで踊り場に着いた。純はゆっくりと腰を下ろす。
 私は彼の前に仁王立ちで問い質す。
「どうも、しっくりこない」
 純はあたまを抱える。
「焦らなくていいんじゃない? 別れた恋人を忘れてすぐ次にいくったって、うまくいかないもんだと思うよ」
「俺は圭吾先輩と瞬にどっぷり浸かってた」
「しばらく、独りでいたら? やれることもあるでしょ――ってか疑問なんだけど、どうして圭吾先輩には“先輩”ってつけるのに、瞬は呼び捨てなの? 同じいっこ上でしょ」
「なんでだろ。なんとなくそう呼ぶようになってた。学年の垣根を飛び越えて、仲良かったし」
「ふーん」
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