かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
「私は純の傍にいたいよ」
「うん」
「傍にいたい」
「うん」
 彼の返事はどういう意味なのか解らず、だった。
純の右手は、私の体温で温められてきたので、次に彼の左手をとった。
私のぬくもりで彼を温められる位置にいたい。
できれば同じ大学に行きたい。
だけど私には、彼の瞬を想う気持ちを止める権利はない。
 屋上が見えるドアの窓から、ぱらぱらっとお天気雨が降るのが見えた。
 色を落としたイチョウの葉が、ガラスにぴたっと張りつく。
 落ちないといい。そのまま、窓ガラスを彩っていて欲しい、そう思った。
 私という存在も、純のこころに張りついていたい。
 秋が終わっても、冬になっても、大学生になっても、その先も、ずっと。
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