婚約者は霧の怪異
「許すも何も、私はそんな立場ではありませんよ」


 三栖斗はあっさりそれを承諾する。


「それじゃあ、なるべく早いうちに今度は私から連絡をしてそっちに行くわね。進路の事もそろそろ考える時期じゃない? 将来の事も含めて色々と早めに考えないといけないからね」

「あ……そっか、進路……」


 特に将来なりたいものもなく、でもまだ時間はあるしどうしようかなんて考えていた。両親との話がちゃんと終わって納得してもらえたら、一緒に考えよう、きちんと。


「そういえば三栖斗、せっかくおばあちゃん達に会えたんだから、訊きたい事があったんじゃないの?」

「ん?」

「えっと、ほら……人間とバケモノの恋愛に興味があったんじゃ?」

「ああ、それはそうだが……」


 ふむ、と三栖斗は考え込むような仕草をし、もう一度短く唸ってから口を開いた。


「以前はただの興味だったな確かに。今はそうではないよ」


 好奇心だったのが、もうそれだけではないらしい。銀河が言っていた「三栖斗が変わった」というのはこういう所にも出ているのかな、なんて思った。



**********



 部活が終わって、弘則は珍しく他のメンバーと一緒に帰らなかった。

 部活棟の廊下に4人で残って、祖母の家での話を聞きたがったから、部室に戻ってそのままを話した。


「雛ちゃん、迷惑じゃなかったら俺も……おじさんとおばさんに話す場に同席させてもらいたい」

「え?」


 話を聞き終えて、祖母達が近々ウチに来る事を知った弘則は、まずそう言った。


「元は、俺を助けるために縁を結んだ事から始まったんでしょ? そこを説明するんだったら、俺もその場に居たいんだ。おじさん達に謝る必要があるなら俺は謝るし、でも……俺は2人に感謝してるんだよって事をおじさん達に伝えたい。それで、雛ちゃん達の味方になるよ」

「……」


 三栖斗を見る。彼は黙って頷いた。

 銀河は「俺は必要とあれば行くけど、いらないでしょ?」と机に肘をついて不敵に笑う。うむ、と三栖斗が同じような笑みを見せた。
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