婚約者は霧の怪異
「そろそろ次の卓も満員になると思う」
そう言って、急遽作ったらしき段ボールの番号札を見せてくれた。
「オッケー。じゃ、これ引き継ぐよ」
「ありがと」
1つのテーブルに最大6人、今10番まで発行されてて……。
「先輩、お疲れ様です」
手の中で番号札を数えていると、小城さんが教室にやって来た。
「小城さん! お疲れ~! ダンスかっこよかったよ!」
「えへへ、ありがとうございます」
小城さんの当番はもう終わったんだよね? と言ったら「はい」と彼女が頷く。
「友達と一緒に回る約束してるんですけど、その子がまだしばらくお化け屋敷の当番やってて。ここで時間をつぶそうかなと思って来たんです。……それにしても午前はもっと人が少なかったのにすごいですね。何かお手伝いしましょうか?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
するとそこに、中学生くらいの男の子が私服姿で入って来て観戦の輪に加わっていく。
小城さんがその子に近づいて行って「やってみますか?」と声をかけると、その男の子はじっと小城さんを見てから答えた。
「君はやらないの?」
「えっ、私ですか?」
「……」
コクリと男の子が頷く。そのやり取りを少し離れたところで見守っていると、三栖斗が私に耳打ちした。
「旧図書室のアイツだ」
「え?」
「七不思議の」
「……ええっ!?」
ぱしっ、と手で口をふさがれる。三栖斗は私の手の中の11番と12番の番号札を抜き取ると、2人のところに歩いて行って声をかけた。
「あ、佐古先輩」
「間もなく次のゲームになる。2人分空いてるから小城さんも入るか?」
「……君がやるなら……僕もやる」
小城さんはなぜ自分が指名されているのかわからず、目をパチパチさせながら「わかりました」と答えた。
三栖斗は1から10の番号札を持ち、教室の中で観戦しながら次の番を待つ人たちに呼びかける。
「次のゲームですが、初心者じゃない人……もしくは強い相手とやりたい人いますか」
何人かが手を上げる。そのメンバーの番号の控え札を手元の束から抜き取り、三栖斗は私に残った初心者の番号札だけを渡した。……ちょうど6人ずつに分かれてる。
「初心者卓と分けるの?」
自分の担当テーブルの進行を終えた弘則がいつの間にか隣に立っていた。
入れ替わりで、小城さんと例の男の子がいるグループが、三栖斗によって案内される。
「うん。小城さん強いから……」
「いつの間にかトラップのコンボで囲まれちゃうんだよねえ。でも手加減しようと思えばできそうだけど」
「うーん……多分、あの中にしてほしくない子がいるんだよね……手加減」
全員が席につく。簡単に自己紹介をしていき、小城さんの次は男の子の番になった。