婚約者は霧の怪異
橘 雛芽
*****
「霧が出てきた。早く……帰らないと。帰り道がわからなくなっちゃう」
あれ? どうして私は山の中を歩いているんだっけ?
……そうだ、弘則の家と私の家で一緒にキャンプに来て……弘則がいつの間にかいなくなってて……でも、あれ? それって何年も前の事じゃなかったっけ?
あ、これ夢か。
気づいてしまうととても不思議な感覚。そういえば前にこんな事があったなと、辺りを見回す。
「結局……どこで弘則を見つけたんだっけ。あまり覚えてないんだよね」
夢と分かっていても、山の中で迷子になった弘則を一人にはしておけない。可哀相だし。きっと今頃怖がって座り込んで泣いているに違いない。
「あれ? でも……前はあんなに怖がりじゃなかった気がしなくも……」
霧で視界がどんどん奪われる。
本当にこっちに居るのかな……。実はさっさとみんなの所に戻ってるかもしれない。なんて思い始めた時、木の根に躓いて転びそうになった。
「わっ、と」
咄嗟に木の幹につかまって転ばずに済んだ。
けれど、転んだ先に地面がない。そんなに高くはないけど、あのまま落ちたら大ケガしそうな崖だった。
「あっぶな……」
けれど……そこに覚えのある服の色がかすかに見えて……。
*****
「霧が出てきた。早く……帰らないと。帰り道がわからなくなっちゃう」
あれ? どうして私は山の中を歩いているんだっけ?
……そうだ、弘則の家と私の家で一緒にキャンプに来て……弘則がいつの間にかいなくなってて……でも、あれ? それって何年も前の事じゃなかったっけ?
あ、これ夢か。
気づいてしまうととても不思議な感覚。そういえば前にこんな事があったなと、辺りを見回す。
「結局……どこで弘則を見つけたんだっけ。あまり覚えてないんだよね」
夢と分かっていても、山の中で迷子になった弘則を一人にはしておけない。可哀相だし。きっと今頃怖がって座り込んで泣いているに違いない。
「あれ? でも……前はあんなに怖がりじゃなかった気がしなくも……」
霧で視界がどんどん奪われる。
本当にこっちに居るのかな……。実はさっさとみんなの所に戻ってるかもしれない。なんて思い始めた時、木の根に躓いて転びそうになった。
「わっ、と」
咄嗟に木の幹につかまって転ばずに済んだ。
けれど、転んだ先に地面がない。そんなに高くはないけど、あのまま落ちたら大ケガしそうな崖だった。
「あっぶな……」
けれど……そこに覚えのある服の色がかすかに見えて……。
*****