婚約者は霧の怪異
◇
「ねえ、俺今になって気づいたんだけど……俺のポジションなかなかツラいとこじゃない?」
観覧車を待っている時に銀河が呟いた。
4人乗りの観覧車に、2人と3人で乗るとして……どう分かれるかという話で男女に分かれるか、カップルを2人で乗せるかという話をしていた時だ。
「今日、常に1人余りやすいポジなんだよな」
「大丈夫、銀河くん歓迎するよ。私たちと観覧車で女子トークしよ?」
怜音が銀河の腕を引き寄せて3人組をふんわり作る。私は男女でもいいんだけど、と言ったら「三栖斗と俺の2人で観覧車って何が楽しいの?」と銀河に真顔で言われてしまった。いいじゃん別に中で喋ってれば。
先に私と三栖斗が乗り込む。乗ってすぐに彼は周りをキョロキョロと珍しそうに見て、なるほどこういう物かと呟く。
「絶叫系もお化け屋敷も何もかも平気なんだね」
「乗り物はともかく、お化け屋敷で私が怖がると思うか?」
「それもそっか」
どんどん地面が離れていく。下を見ると、怜音達の乗っているゴンドラの一部が見えるけど、角度的にまだ中の怜音達は見えない。
「修学旅行は楽しい?」
「ん? ああ、まあ……こういうのは初めてでなかなか新鮮な気持ちだ」
「そう」
向かい合って座っているとなんだか場所が場所だからか緊張してしまう。どうせ三栖斗には観覧車にカップル2人で乗ってるからどうだとかいう意識はないんだろうけど。ふと頂上を見る。別にここにそんなジンクスなんてないけど、どうしても思い浮かべてしまう。
「どうかしたか? 高いところが苦手というわけではないのだろう?」
「あ、ううん。大丈夫……いや、三栖斗はしないだろうけど、よく観覧車の頂上に来た時にキスをすると永遠に結ばれるとか言うよなぁって思い出して」
「したいのか」
「そういう事じゃないの!! 思い出しただけなの!! するわけないでしょ!!」
クックックッと三栖斗が喉を鳴らして笑う。
「そうだな。それに、永遠ならもう約束されているようなものだろう」
「ね、ねえ! 私がしたかったみたいに言うのやめて」
「ふふ、顔が赤いぞ雛芽。落ち着け」
息を整えながら、私は座り直す。
いつの間にか頂点近くまで来ていて、後ろを振り向けば怜音達と目が合ってお互いに手を振りあった。
ポコンとスマホの通知音が鳴る。怜音からハートマークのスタンプが連続して送られてきた。ポコンポコンポコンポコンポコンポコン。……シンプルに……うるさい。
それでもその鬱陶しさに笑ってしまって「そっちは何話してるの」と送って一旦ポケットにスマホをしまった。
「私は……最近よくやってるみたいにさ。ただ隣に座って……まったり喋ってるだけの時間とか、喋ってなくても一緒にお茶飲んでるだけの時間とか……好きだよ」
「なるほど、確かにそれは風呂みたいだな」
「お風呂はもういいからっ」
いや、あながち間違いではないんだけど。
とにかく、恋人になってから私たちはちょっとくっついてる時間が多いと自分でもわかってるの。部活が終わって、三栖斗の部屋に行って、下校時間までソファに並んで座って過眠でも取るみたいに静かにずっと過ごす……なんて事が増えた。
その時間がすごく幸福で、あたたかくて完全にこう……客観的に見るとメロメロっていうの? そういう状態になってるのはわかってるんだけど、でもつい……! つい……!
「ねえ、俺今になって気づいたんだけど……俺のポジションなかなかツラいとこじゃない?」
観覧車を待っている時に銀河が呟いた。
4人乗りの観覧車に、2人と3人で乗るとして……どう分かれるかという話で男女に分かれるか、カップルを2人で乗せるかという話をしていた時だ。
「今日、常に1人余りやすいポジなんだよな」
「大丈夫、銀河くん歓迎するよ。私たちと観覧車で女子トークしよ?」
怜音が銀河の腕を引き寄せて3人組をふんわり作る。私は男女でもいいんだけど、と言ったら「三栖斗と俺の2人で観覧車って何が楽しいの?」と銀河に真顔で言われてしまった。いいじゃん別に中で喋ってれば。
先に私と三栖斗が乗り込む。乗ってすぐに彼は周りをキョロキョロと珍しそうに見て、なるほどこういう物かと呟く。
「絶叫系もお化け屋敷も何もかも平気なんだね」
「乗り物はともかく、お化け屋敷で私が怖がると思うか?」
「それもそっか」
どんどん地面が離れていく。下を見ると、怜音達の乗っているゴンドラの一部が見えるけど、角度的にまだ中の怜音達は見えない。
「修学旅行は楽しい?」
「ん? ああ、まあ……こういうのは初めてでなかなか新鮮な気持ちだ」
「そう」
向かい合って座っているとなんだか場所が場所だからか緊張してしまう。どうせ三栖斗には観覧車にカップル2人で乗ってるからどうだとかいう意識はないんだろうけど。ふと頂上を見る。別にここにそんなジンクスなんてないけど、どうしても思い浮かべてしまう。
「どうかしたか? 高いところが苦手というわけではないのだろう?」
「あ、ううん。大丈夫……いや、三栖斗はしないだろうけど、よく観覧車の頂上に来た時にキスをすると永遠に結ばれるとか言うよなぁって思い出して」
「したいのか」
「そういう事じゃないの!! 思い出しただけなの!! するわけないでしょ!!」
クックックッと三栖斗が喉を鳴らして笑う。
「そうだな。それに、永遠ならもう約束されているようなものだろう」
「ね、ねえ! 私がしたかったみたいに言うのやめて」
「ふふ、顔が赤いぞ雛芽。落ち着け」
息を整えながら、私は座り直す。
いつの間にか頂点近くまで来ていて、後ろを振り向けば怜音達と目が合ってお互いに手を振りあった。
ポコンとスマホの通知音が鳴る。怜音からハートマークのスタンプが連続して送られてきた。ポコンポコンポコンポコンポコンポコン。……シンプルに……うるさい。
それでもその鬱陶しさに笑ってしまって「そっちは何話してるの」と送って一旦ポケットにスマホをしまった。
「私は……最近よくやってるみたいにさ。ただ隣に座って……まったり喋ってるだけの時間とか、喋ってなくても一緒にお茶飲んでるだけの時間とか……好きだよ」
「なるほど、確かにそれは風呂みたいだな」
「お風呂はもういいからっ」
いや、あながち間違いではないんだけど。
とにかく、恋人になってから私たちはちょっとくっついてる時間が多いと自分でもわかってるの。部活が終わって、三栖斗の部屋に行って、下校時間までソファに並んで座って過眠でも取るみたいに静かにずっと過ごす……なんて事が増えた。
その時間がすごく幸福で、あたたかくて完全にこう……客観的に見るとメロメロっていうの? そういう状態になってるのはわかってるんだけど、でもつい……! つい……!