婚約者は霧の怪異
迷いに迷った結果、小城さんが時々髪のお団子にかんざしを挿しているのでこれがいいだろうと、トンボ玉がきれいなかんざしを買った。
お茶系のお菓子が好きな弘則のお土産も種類が多くてかなり悩んだけれど、抹茶とほうじ茶を使ったお菓子を選んだ。
こうして2人でお店を見ながら歩いていると、三栖斗は本当に普通の高校生と変わらないように見える。小城さんの話題も弘則の話題も興味がないなんて事はないし、自然に笑うし、まあ……ちょっと話し方は高校生らしくはないけど。
ふと、彼はいつまで高校生の中に紛れて生活してるつもりなんだろうと思った。もしかして卒業まで付き合ってくれるつもりなのかな。
「あ、佐古じゃん」
偶然、戸畑くん達のグループと会って、声をかけられた。
「なあこれ今俺らどこにいんの?」
「なんだ迷子か」
人ごみの中、邪魔にならないような場所に避けて先生から配られた地図を見ながら三栖斗が道を教える。
男子だけで輪ができていたので、私は気を使われないよう数歩離れた所で自分のスマホを弄りながら彼らの話が終わるのを待つことにした。
「雛芽」
スマホの画面を見て間もなく、私を呼ぶ声が後ろから聞こえたので「え?」と振り向く。三栖斗のいる方向は前だったから、三栖斗ではない。そしてその声は、銀河でもない。
振り向いて目の前に立っていたのは、和服姿の大人の男性だった。黒に近いグレーの和服に、黒い短髪。どこかで見覚えがあるような目元。歳は……20代半ばくらい?
どちら様でしたっけ? と尋ねる前に、「シッ」と人差し指を口に当て、静かにするように指示される。
「俺が誰かは聞かないでほしい」
「え?」
けれど、銀色の瞳を見て、間違っていたら謝ろうと思いながら私は小声で話す。
「えっと……とりあえず人間じゃ、ない……?」
「…………」
目の前の男性は目を細めた。
「どこまで知っている?」
「……誰かわからない人に答える事じゃないと思うんですけど」
それもそうか、と男性はため息を吐く。
そして一度、三栖斗の方を確認した。私も一緒に三栖斗の方を見る。あわよくばこちらに気付いて助け船を出してほしいなんて思いながら。
思いが通じたのか、三栖斗はふとこちらへ目線を寄越した。見慣れない男の姿に、少し驚いた様子を見せ、戸畑くん達との話を終わらせこちらへ向かって来る。
横目で、男が逃げようとしたのが見え、私は反射的にその袖を掴んでいた。
「っ!?」
「いや、ほら……話をしたいんじゃなかったんですか」
明らかに焦った様子に、私に余裕が生まれ口元に笑みがこぼれる。
お茶系のお菓子が好きな弘則のお土産も種類が多くてかなり悩んだけれど、抹茶とほうじ茶を使ったお菓子を選んだ。
こうして2人でお店を見ながら歩いていると、三栖斗は本当に普通の高校生と変わらないように見える。小城さんの話題も弘則の話題も興味がないなんて事はないし、自然に笑うし、まあ……ちょっと話し方は高校生らしくはないけど。
ふと、彼はいつまで高校生の中に紛れて生活してるつもりなんだろうと思った。もしかして卒業まで付き合ってくれるつもりなのかな。
「あ、佐古じゃん」
偶然、戸畑くん達のグループと会って、声をかけられた。
「なあこれ今俺らどこにいんの?」
「なんだ迷子か」
人ごみの中、邪魔にならないような場所に避けて先生から配られた地図を見ながら三栖斗が道を教える。
男子だけで輪ができていたので、私は気を使われないよう数歩離れた所で自分のスマホを弄りながら彼らの話が終わるのを待つことにした。
「雛芽」
スマホの画面を見て間もなく、私を呼ぶ声が後ろから聞こえたので「え?」と振り向く。三栖斗のいる方向は前だったから、三栖斗ではない。そしてその声は、銀河でもない。
振り向いて目の前に立っていたのは、和服姿の大人の男性だった。黒に近いグレーの和服に、黒い短髪。どこかで見覚えがあるような目元。歳は……20代半ばくらい?
どちら様でしたっけ? と尋ねる前に、「シッ」と人差し指を口に当て、静かにするように指示される。
「俺が誰かは聞かないでほしい」
「え?」
けれど、銀色の瞳を見て、間違っていたら謝ろうと思いながら私は小声で話す。
「えっと……とりあえず人間じゃ、ない……?」
「…………」
目の前の男性は目を細めた。
「どこまで知っている?」
「……誰かわからない人に答える事じゃないと思うんですけど」
それもそうか、と男性はため息を吐く。
そして一度、三栖斗の方を確認した。私も一緒に三栖斗の方を見る。あわよくばこちらに気付いて助け船を出してほしいなんて思いながら。
思いが通じたのか、三栖斗はふとこちらへ目線を寄越した。見慣れない男の姿に、少し驚いた様子を見せ、戸畑くん達との話を終わらせこちらへ向かって来る。
横目で、男が逃げようとしたのが見え、私は反射的にその袖を掴んでいた。
「っ!?」
「いや、ほら……話をしたいんじゃなかったんですか」
明らかに焦った様子に、私に余裕が生まれ口元に笑みがこぼれる。