シークレットシープ



軽やかな足取りで階段を上がる深沢君。


……本当に全部任せてていいのかなぁ。
段ボール、一箱なら私の力でも持てそうなのに。

なんで二箱とも持つってこだわっちゃったんだろう。


そんな風に思いながら深沢君の斜め後ろを歩く。



「……深沢君、ありがとう」


「別に。お礼なんかいらねー」



……あまのじゃくだなぁ。
お礼も素直に受けとめてくれない。



「いやいや、お礼言うほどのことだよ。あっ、じゃあ、放課後プリン買ってあげる」


「…………」




無言で一瞬だけ足を止めた彼に、思わず笑みがこぼれた。
「プリンなんかいらねー」って言わないってことは、プリンはいるんだね。


顔に似合わず甘党。
そんな深沢君の一面を知っているのは、たぶん私だけ。



「ふふっ」


「……なんだよ、突然笑うとか気色悪」


「だから!!人を傷つける言葉は使わない!!」


「うるせーよ、優等生」




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