シークレットシープ
手の中にある本の並んだ文字列から、視線を横にうつす。
私の肩にもたれかかって、子どもみたいな顔をして眠っているのは、深沢君。
夕日に透ける明るい茶髪の前髪をそっとなでると彼は深沢君は軽く身じろぎした。
いけない、起こしちゃった……?
そう思って伏せ気味の顔を覗き込んだ。
……良かった。しっかり瞳は閉じられている。
廊下から聞こえてくる、ゆったりとした音楽に合わせて小さく鼻歌を歌いながら再度本に意識を向ける。
噂がある。
優等生浦部梨良と問題児深沢雅玖は付き合ってる。
真実は、付き合ってなんかないよ。
噂がある。
学級委員浦部梨良と遅刻魔深沢雅玖は放課後の教室でキスをしている。
真実は、キスするような関係じゃないんだからキスなんてしてるわけないよ。
噂がある。
浦部梨良と深沢雅玖は放課後寝てる。
この噂は、すこしだけ本当。
深沢雅玖は放課後の教室で私の隣で寝息を立てる。